やさしいおんがく

音楽とかあれこれ

夜を駆ける

いい天気で気持ち良いですが、一気に暖かくなると、花粉がぶぁっと飛びそうで怖いですね。。

 

 

そろそろスピッツの話をしたいと思います(笑)

8823でロックオンされて以来、スピッツのとりこです。

 

なぜこんなにも飽きずにずっと聴き続けられてらいるのか。

それはスピッツの音楽が聴き易い、というかずっと聴いても疲れない、主張が激しくない、でも飽きさせないということにあると思います。

一見後ろ向きな理由に思われるかもしれませんが、いろんなバンドの音楽を聴いていると、一見かっこいいサウンドでもずっと聴いていると耳が疲れてきてイヤホンを離したくなったり、もしくは音数が少なかったり、身体に響く振動が少なくていまいち乗れなかったりすることがあるのです。

スピッツはそういうことが少ないバンドです。

 

そして、情景を描くのが上手いグループだなと思います。

草野さんが歌う歌詞が物語の展開で、奏でるサウンドが背景の描写をしているような感じ、あぁ、うまく言えない。

そしてずっとふわふわと浮遊しているような感覚。

 スピッツの音は何か、例えば息が白くなるような寒さ、冬の窓際のポカポカした感じ、冬の夜のひとり世界に取り残されたような感覚、川の水の冷たさ、そういった温度とか匂いとか空気感を伴った音を作り上げている感じがあって、それが情景の描写につながっている気がします。そして、それを支える演奏技術があるからできるのだと思います。

 

例えば「夜を駆ける」という曲。

 

ギター、ベース、ドラム、キーボード、それぞれ単体ではメロらしいメロはなく展開らしい展開もなく、ずっと同じようなフレーズの繰り返しです。

たぶん楽譜にしたら、単調。

ハノンの楽譜みたいな。

派手なプレイをしたいギタリストからしたら反発が来そうなギターのフレーズの繰り返し。AメロBメロなんてフレーズすらあんまりなくて、ギターの歪んだ音がほとんど。でもそのおかげで誰もいない夜のキーンと張り詰めた緊張感を演出できています。

草野さんのアコギはあくまで歌の補助という感じ。 

ベースはこの曲は田村さんにしては単調(に聞こえる)で、暗闇の中を走っている、それも誰かに追いかけられて走っているような、そういう曲の「駆ける」という部分をいかに音で演出するかを考えて演奏している印象を受けます。

ドラムがフレーズ的には一番変化にとんでいて、夜を駆ける疾走感を表したり、夜の空気の冷たさや緊張感を表したりしています。

このドラムがすごくて、一見同じフレーズの繰り返しに思えますが、各小節少しずつ音を変えています。これによって単調にならず、ずっと緊迫感が持続します。

あと、スピッツはコーラスを効果的に使ってきます。曲によってコーラスをする人を変えてきます。

 

単調なフレーズの繰り返し、でもそれが重なり合うと、立体的な世界が出来上がるのが不思議です。

 

全体を通して張り詰めた空気感と焦燥感と不気味さを感じる曲になっています。最後だけ少し緊張感がふっと緩んでどこか温かなでも寂しい空気感を残して曲が終わります。歌詞を追わずに音だけ聴いていると冬の夜中の閑静な住宅街の中を誰かに追われて必死で逃げている、そんな感じに私は聞こえて仕方がありません。歌詞には一言も冬に関するワードは出てきません。むしろ夏を思わせるワードがあります。でも私には冬の澄んだ寒空の中に主人公がいるように聴こえます。

(タイトルと歌詞の内容は割と合致しているのですが、これまたいろいろと解釈できそうな歌詞です。歌詞にまで突っ込むと長くなるのでやめます。)

何にせよ、音だけで聴く側にこれだけの想像力を働かせる力がスピッツの音楽にはあるということです。

 

何か物悲しい、寂しい、でもどこかに温かさと仄かな優しさがあって、決して後味は悪くない、そういったジャンルの曲を作らせたらスピッツは他に負けないと思うし、そこが魅力だと思います。

 

 

夜を駆けるだけで長くなってしまいました。

ちなみにこの曲は三日月ロックというアルバムに収録されています。

いろいろと書きましたが、私はこの曲はとにかくドラムばっかり追ってしまいます。草野さんに歌詞も聞いてと怒られそうなくらい(笑)それぐらい、ドラムに圧倒されます。かっこいい!とかじゃなくて、圧倒されるのです。

結構好きな曲の上位に入ってきます。