チャットモンチーの詩
スピッツもかなり詩的ですが、チャットモンチーはそれ以上に詩的な歌詞だと思っています。
チャットモンチーは作詞が先で作曲を後からします。作詞は3人それぞれが行い、作曲はえっちゃんが担当します。
前の記事に言葉遊びが巧みで韻の踏み方が上手いと書きましたが、これにプラスして世界の描写の仕方が魅力です。
①ハナノユメ (高橋久美子)
薄い紙で指を切って
赤い赤い血が滲む
これっぽっちの刃で痛い痛い指の先
枯れてしまったピンク色のバラ
明日はちゃんと水を吸って
元気に元気になりますように
どうかどうか幸せをあげるから
二本足で立つ地球のすみっこ
ふらつく体バランスとれてるかしら
トランス状態抜け出せなくて
グルグル回る明日はどこ
比喩のオンパレードです。これがデビュー曲です。くみこんの曲は比較的キャッチーで分かりやすく、売れている曲が多い印象です。シャングリラ、風吹けば恋もくみこん作詞です。世間のイメージに近いチャットモンチーの曲が多いですね。
②とび魚のバタフライ (福岡晃子)
今とび魚になって空と海バタフライ
ちぎれ雲で昼寝して入道雲に砂糖かけて
今とび魚になって空と海バタフライ
塩からい波を蹴ってしぶきがリズムになる
ブルーブルーブルー
ブルーブルーホワイトブルー
何て果てしない空
迷子になったちぎれ雲
こっちへおいでこっちへおいで
ブルーブルーネイビーブルー
なんて柔らかな海
飛び込んだらみんな魚
あっちにゆらりこっちにふらり
これは言葉遊びと韻の踏み方が上手いというのを如実に表している曲です。またサウンド的にもこれはチャットモンチーだから作れる音の世界だなという感じに仕上がっています。これは他のバンドには真似できない世界だと思います。
③世界が終わる夜に (福岡晃子)
たとえば砂漠で花が咲き
また不幸の種がなる
どうせ育ちやしないから
みんな何かに目をそらしてる
たとえば優しく風が吹き
後悔の兵隊が来る
しまったもう心は穴だらけだ
今もどこかがいろんな理由で
壊れ始めてる hey hey hey
私が悪魔だったら
こんな世界は作らなかった
命の砂時計は
結局空っぽだったんだ
サウンドも好きな曲です。書いたのは2番の歌詞です。心にグサッと刺さります。あっこちゃんが何を意図して作ったのかは分かりませんが、でも人身事故に遭遇して書いた歌詞だと言っていました。
④Last Love Letter (福岡晃子)
私の知らないところで
泣いてはいませんか
誰も知らないところで
泣いてはいませんか
涙は他人に見られて
初めてカタチになるの
涙は他人に見られて
初めて輝き出すのです
私の知らないところで
私に傷つけられてはいませんか
過去は生きてく都合で
カタチを変えてしまうもの
あなたは他人を好きになって
初めてあなたになるの
あなたは他人を好きになって
何度もあなたになるのです
こうやって並べるとあっこちゃんの曲が続きますね。歌詞を改めて見ると、あっこちゃんはとても優しい人なんだろうなと感じます。ベースの音がかっこいい曲でもあります。
⑥恋愛スピリッツ (橋本絵莉子)
今までひとつでも失くさないものってあったかな
今までひとつでも手に入れたものってあったかな
どうか無意味なものにならないでね
今すぐ意味のあるものになってね
あの人がそばにいない
あなたのそばに今いない
だからあなたは私を手放せない
今までひとりでは探せないものってあったかな
今までひとりでは作れないものってあったかな
どうか無意味なものにならないでね
今すぐ意味のあるものになってね
あの人をかぶせないで
あの人を着せないで
あの人を見ないで私を見てね
あの人がそばに来たら
あなたの側にもし来たら
私を捨ててあの人摑まえるの?
えっちゃんの歌詞が3人の中で重く、人間のエゴやリアルな感情を吐露したものが多いです。えっちゃんの歌い方ありきの曲が多く、鋭く尖った印象を受ける曲が多いです。3人の中でやはりえっちゃんが一番ロックへの想いが強いと言えそうです。あと、えっちゃんの曲は音で遊ぶ曲が多く、自分が作詞する場合は作詞→作曲という明確な線引きはなく、同時進行でやっているような感じがします。
推進力とかここだけの話とか特にそう感じます。
⑦こころとあたま (橋本絵莉子)
こころ
あなたが感じるのは、
うそのない、気持ちなのね
あたま
きみの考えることが、
うそのない、答えなのね
こころと、あたまよ、
ずっと寄り添っていて
二つで一つでいて
離れていたらかなりしんどいのよ
どっちも正解にしてあげるよ
2人になってからのえっちゃんの曲です。3人時代より前向きな感じの曲が増えます。これは本人も意図してのことのようです。
挙げだしたらきりがないのでここらへんでやめときます。
こうやって並べてみてわかったことがあります。それは作詞者を重視して曲の構成も考えられているのでは?ということです。
えっちゃん作詞ならギターガンガン鳴らして歪ませまくる曲、尖った印象。
くみこん作詞ならドラムが前に出た疾走感のある曲。
あっこちゃん作詞ならベースラインが印象的かつ可愛らしい女性らしい曲。
それはえっちゃんがそういう風に作曲をしているのか、3人の方針なのかは分からないですが。そこまで考えて作っている気もしますし、感覚でやっている気もするし、3人ならどっちもあり得ますね。3人のキャラもあるのかもですが。
例えば恋愛系の曲でも、えっちゃんなら束縛ドロドロ昼ドラ、くみこんなら前向きに駆けていく爽やかな青春映画、あっこちゃんなら少女から大人に移り変わる心情を描く小説みたいな。
あと、私が好きな曲はあっこちゃん作詞率が高かったです。それは詩もサウンドも両方です。私はベースがしっかり聞こえる音楽が好きなのでそうなるのは納得です。あと歌詞が女性らしいものが多く、ここがスピッツとの住み分けになっている気がします。そしてあっこちゃんの曲が好きというベースがあるから、2人のなっても応援できているのかなとも感じます。わ